有限会社 羅針盤は編集プロダクションです。編集プロダクションとは、書籍や雑誌などを実際に編集・制作する会社のことです。「制作」を一言で説明すると、文章や写真、イラストなど、紙誌面を構成する要素がレイアウトされたデータを作り上げることです(作業自体はエディトリアルデザイナーが担当しますが、その指揮を執るのは編集者です)。
では「編集」とはなにか。テレビや映画、あるいはネット動画の分野でも使われていますし、Amazonにも「カートの編集」なる言葉があります。ビジネスの世界でも「情報を収集して取捨選択し、コンセプトや企画に結び付けたり発信したりする」という意味で「編集」という言葉が重視されるようになっています。バイオテクノロジーの世界には「ゲノム編集」なる言葉もあります。「編集」という言葉、極めて幅広く使われています。
ですので、ここでは書籍や雑誌、会報、広報誌、あるいはWebサイトといった媒体に絞ります。手元の広辞苑第四版には「資料を或る方針・目的のもとに集め、書物・雑誌・新聞などの形に整えること」とあります。一言で表せばそういうことなのでしょうけれど、編集者の仕事は多岐にわたっているが故に、その定義は人によりまちまちではないでしょうか。
実際、編集者は企画を考え、著者やカメラマンやデザイナー、イラストレーター、紙媒体の場合は印刷所を選定して依頼、原稿やゲラをチェックし、書籍なら価格や発行部数、印税率、関係者へのギャランティを決め、時には販促に向けた知恵も絞ります。とにかく媒体ができあがるまでとことん付き合い、商業出版物ならば一連の過程で「どうしたら売れるか」を常に考え続けます。個人的な印象としては、全人的な能力を傾けて、本づくりという幅広い業務を担う職人だと思います。
職人というと「一人でコツコツ」というイメージがありますが、編集者にはあてはまりません。一冊の媒体を作り上げるには、各分野のプロフェッショナルたちとのチームワークが必須です。そのまとめ役が編集者です。オーケストラの指揮者に喩えられることもあるほどです。
むろん必ずしも、まとめやすい人たちばかりではありません。とんでもないことを言い出したり締め切りを守らない著者は珍しくありません。ネットから文章をコピペして平然とオリジナル原稿として送ってきたライターも何人かいました。原稿確認の段階でいずれも運良く発覚しましたが、そのまま世に出てしまっていたら大問題です。剽窃は論外としても、一癖も二癖もある人たち(こういう人たちだからこそ、面白いモノを作れたりするわけですが)と上手にコミュニケーションを保ちながら媒体をつくり上げていくのは、なかなかに気を使います。
そんな思いをしてまで媒体を世に出す編集者の目的は、なんなのでしょうか。これこそが、「編集とはなんぞや?」の答えなのではないかと思っています。それは即ち、「読み手を動かす」こと。ただ読んで「面白かった」だけでなく、たくさん売れて「儲かった」だけでなく、自分が携わった書籍や雑誌や会報や広報誌やWebサイトの読者が、その後の人生を少しでも良い方向へ踏み出すためのアクションを起こしてくれること――これこそが編集者冥利に尽きるのだと、個人的には思っています。そのためには、単なる「説得力」を超えた、それ以上の想いというか情熱というか熱量というか、読者を突き動かすエネルギーが媒体に込められていなければならぬと信じています。
手がけるすべての媒体に、読者の心を動かし行動を促すエネルギーを!――これが、有限会社 羅針盤の理念でありミッション。実現に向けて、日々全力で取り組んでいます。